現在の地方自治の矛盾点
現在の地方公共団体は、一番下に市町村がありその上に都道府県があるという二重構造になっています。単純に考えてもどうして二重にせざるを得ないか不思議です。確かに個々の市町村だけでは行えない広域的な行政を行う機関は必要であり、地方自治法では「都道府県は広域にわたる事務を処理する広域自治体」として位置付けています。 しかし、私が問題と思うのは「広域にわたる事務処理」の内容です。例えば、地方自治法第148条「事務の管理および執行」と第150条「長が処理する国家事務の指揮監督」によると、国の事務を処理する場合には知事や市町村長へ委任することができ、最終的に末端の市町村長は知事や大臣の指揮監督を受けながら、国の事務を執行しなくてはなりません。 上記のような国の委任事務が少なければとりたて問題ではないのですが、地方自治法の別表に掲げてある機関委任事務の数の多さをみると、極端な言い方をすれば都道府県は単なる国の出先機関であり、市町村はその下部機関にすぎないと思えてしまいます。このような現状を考えると、市は本当に住民のための行政機関であると言えるのでしょうか? そしてこんなことをしていて本当に行政の効率化が図れるのでしょうか?地方自治法の最初に掲げている第1条「この法律の目的」で、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとうたっていますが、上記に挙げたように後に続く条文の中にはいくつか矛盾が存在します。 条文の矛盾は異なる法律同士でも見受けられます。例えば都市計画法を見ると、市町村が地区計画について都市計画を決定しようとするときは、都道府県知事の承認を受けなければならない(第19条)とか、都道府県計画が定められているときは都道府県計画を基本とする(第15条)等記述されています。また国土利用計画法でも、都道府県知事が市町村計画について報告を受けたときは、市町村に対し必要な助言または勧告をすることができる(第8条)、と記述されています。これらは明らかに都道府県が市町村に対して監督権を行使できるという意味にもとらえられ、地方自治法の「地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図る」という建て前を根底から覆すものです。
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